お化けビル第11話

オレはネズミ、白くて青い目をしたネズミだ。

生まれた時から天涯孤独なんだが、幸いにもそれを寂しいと思ったことは一度もない。

というか、寂しいと思う感覚がオレにはよくわからないんだ。

生まれた時、オレの他には親も仲間も居なかったからだ。

人は世に生を受けるなんて言い方をするけど、

この言葉をオレに当て嵌めるとすれば、そうだな

オレが生まれてから最初に見た光景は

何とも狭い部屋の中だった。

清潔感はあったのかも知れないが

オレにはどうもこの部屋が気に入らなかったんだ。

で、何人かの人間がそこにいた。

そいつらは全員白衣を着ていたんだけど

何やら呟いているようだった。

ダメだ、失敗だったってな。

そこでオレは解ったんだ。

なるほどねと思った訳よ。

オレは人間いや、研究者と言ったほうが正しいのかも知れない。

実験サンプルとして生まれてきたんだ。

幸いにも、オレには他のネズミにない知能が備わっていそうだ。

人間達には黙っているが、そのうち言葉も喋れるようになるだろう。

奴らに言わせれば、オレは便利な道具として期待されてた訳よ。

まあ、期待は期待だけに終わってしまったんだがな。ざまみやがれ。

オレは近処分されるだろう。

だが、そうはいかないね。

先手必勝だ。暢気にお前たちが来る前に

オレ様はここからズラからして貰うぜ。

思えば、人間とはつくづく間抜けな生き物だ。

建物の隅までちゃんとメンテやってないから

オレにとっちゃ何処へ行っても出入り自由。

ちょっと足を運べば、目の前にコンビニエンスストアがある。

よし、あそこで昼飯をゲットするか。

オレは、わけなく研究所を脱出した。

外はいい天気だ。

オレはのんびりした歩調で道路を渡る。

言っておくがな、信号だってちゃんと守ってるんだぜ。

だから、バカな猫やネズミと一緒にされちゃ困るんだ。

あっ、そうだ。オレにはまだ名前がついてなかったんだった。

名前決めないと

と、思っていたらバカな女達に見つかっちまった。

わぁ、可愛いネズミね

きゃ、ホント

かわいい〜

何の目的もなく、コンビニの前でダラダラ歩いている3人の女子高生だ。

めんどくさい連中だぜ。

ウゼエんだよコラ、早く向こうに行けよ。この野郎。

クソったれがぁ。

オレの願いも虚しく、オレは女の子に尻尾を握られた。

くっ、何しやがる。離せ!

きゃっ、目がクリックリッして愛らしい。青い目してるんだね。毛も白くてフワフワしている、きゃ〜きもちいい

バカ女がオレに頬ずりしやがった。うわっ、やめろ、臭せえ。

化粧臭えんだよ。その悪臭、なんとかしろよ。

ちょ、ちょっとぉ〜芳子ぉ〜、あんただけ触ってずるいよ〜

ほんとう、あたしにも触らせてよ。

何が芳子ぉ〜だ。離せ、この野郎。

オレにとっては生後最大のピンチだ。

このままでは引っ張りまわされる。

ちっ、こうなりゃイチかバチかだ。

チュー!!!

オレは芳子とやらの顔面目掛けて飛び掛った。

予想だにしないオレの動きに芳子がひるんだ。

キャー、ヤダ〜

更に、オレはバカ女の鼻を齧ってやった。

い、いたぁい!

さすがに効いただろう。

オレの顎の力は普通のネズミの3倍はあるんだよ。

へっへっへっ

オレは、そのままバカ女の上着からブラジャーへと侵入してやった。

女が腰をぬかしやがった。

いやぁ、たすけてぇ

どうしたよのう

ね、ネズミが。。。服の中に。。。

うそぉ、気持ち悪い。あんた近づかないでよ

はっはっはっ、友情とは儚いものよのう。

それにしても、この女中弾力性のある肌をしてるな。

プリプリだぜ。

なにしてんのよ。早く出てよ

さすがに女が焦りやがったぜ。はっはっはっ、こりゃ愉快だ。

よし、お望み通り出て行ってやるとするか。

オレは女の上半身から下半身へ移動し、

念の為に、パンツの中にも入って物色した。

が、あるのは、汚らしい毛と異臭がするのみだった。

何だ、この女、ちゃんと風呂入ってんのかよ?

まるで、テメエの不潔さをごまかすかのように化粧で覆ってやがる。

つまらん。

オレは女の足元に着地した。

と、その時だった。

このぉ、糞ネズミがぁ

女が立ち上がり、靴でオレ様を踏んづけに来やがったんだ。

やっと本性をみせたな。

でも、やっぱりコイツはバカだ。

そんなスローな動きでオレ様に当たるとでも思ってんのか。

ちょろちょろするんじぇねえよ。コノぉ、コノぉ、コノぉーーーー!

どうした、どうした、ほらこっちだ。

バカ女達の周りをグルグル回ってやった。

オレは芳子の脚を交わして、もう一度飛び掛った。

身長160センチくらいあったが、その首元まで

一気にジャンプした。そして女の鼻先で

がぉーーー!

吼えてやった。トラの声そっくりにマネてやった。

さすがに女は恐怖に怯えており、

オレはまた女の鼻の上から思い切り

ドカーン!!!

屁をかましてやった。

廃棄物処理センターもびっくりな

オレ様特製のメタンガスだ。

ゲホッ、ゲホッ、臭い

何、何なのよ、このネズミ臭ぁ〜い

頭痛い気持ちわりぃ

女達はのたうち回った。

さすがに、周囲にいた通行人も

あそこの女子高生ら、一体何やってんだ的な顔をしていた。

女達は逃げていった。

バカめ。

落ち着きを取り戻したオレは

コンビニエンスストアの開いた自動ドアから悠然と店内に侵入した。

それにしても、ここのコンビニやる気のない店員だぜ。

監視カメラなんざ、あって無いようなもんじゃねえか。

オレは、コンビニでくすねたカロリーメイトの箱を引き摺りだして、

早足で店舗の裏側へと回った。こんなのは朝飯前だ。

自画自賛する訳じゃないが、オレ様はとってもお利口さんなんだ。

あっ、そうだ。すっかり忘れていた。

名前を考えていたんだっけな。

オレはとっても、お利口さん。

だから

利休?

いや

リキュウ

で、どうだ。

何?恐れ多いだって?

へっ、

気にしない気にしない。

オレ様はちっとも気にしない。

よし、今日からオレの名はリキュウ。

天才ネズミのリキュウだ。

と、そんな時だった。

オレの背後に黒い影が